見上げた空は何色

いろんなことをつらつらと。

女神のサジェスチョン

 2泊3日の東京遠征から無事帰ってきた翌日は寝すぎてしまった。新幹線で4時間、景色を楽しむことよりも車内販売のスジャータアイス抹茶味*1とコーヒーのほうが楽しみなのである。ちなみに広島駅で買ったドトールコーヒーを車内で開けてみるとこぼれててショックだった。今度からはちゃんと安定したところに置いておこうという教訓を得た。

 今回の東京遠征はさくら学院の初代生徒会長であり、自身の誕生日である今年の4月29日にソロプロジェクトを発足した武藤彩未の2回目のライブを見るためであった。ちなみに次の日のさくら学院のチケットはとっておらず泣く泣く広島に帰ったことは秘密である。らうちゃんごめんね、まさか前日に彩未ちゃんがライブするとは思っていなかったんだもの……。

 

  武藤彩未は1996年4月29日生まれの17歳である。8歳のときにデビュー、あの絶対可憐チルドレンの「可憐Girl's」で活躍し、2010年から2012年の3月までさくら学院の初代生徒会長として突っ走ってきた。さくら学院を卒業した3人のうち武藤だけがずっと音沙汰もなく何をしているのかわからない状態であったが、2013年4月29日にその長い沈黙を破り、ソロプロジェクトを発表した。

 「DNA 1980」と銘打たれたそのプロジェクトは96年生まれの彼女が80年代の偉大なるアイドルたちの遺伝子を取り込むという、彼女が憧れを抱く80年代アイドルたちのカバーからはじまるものであった。

 とここまで知ったげに書いているが私が武藤彩未という存在を知ったのはここ数ヶ月のことであるし、7月にあったデビューライブの日には行きたい行きたい……と念仏のように呟きながらツイッターを眺めていた。あのときはあまりにも悔しくてふて寝していたし、2回目があるならば絶対に行かなければならないと心に決めていた。

 そして私が待ち望んでいた2回目の「LIVE DNA1980 〜Version.2.0〜」はデビューライブの1ヶ月半後、9月27日に開催されたのであった。

 これまでさくら学院の「武藤彩未」しか知らなかった私は、しょっぱなの「君をつれて」でやられてしまった。そこにいたのは、本物の、本物のアイドル「武藤彩未」だった。心が震え、体の震えが止まらなかった、彼女の美しい伸びやかな声。派手とはいえない、むしろ今のアイドルが着るにはもの足りないような衣装ですら彼女が着れば鮮やかな光景を彩るものになった。149センチというその小さな体から発せられる声量は1年4ヶ月のトレーニングの賜物だろう。MCのときは昔と変わらぬちょっと抜けている武藤彩未らしくとても楽しかった。今回は前回よりカバー曲を増やし、「夏の扉」や「渚のはいから人魚」などどこかで聞いたことがある80年代をぐっと自身の色に染めていた。

 もう、全てが輝いていた。彼女から溢れ出る、ライブが出来る、歌が歌えるという多幸感が観客にも染み渡っていくような、素晴らしい時間であった。

 歌もダンスもハイレベル、魅せるパフォーマンス力、それが求められるアイドル戦国時代と呼ばれる今の目線から見れば、彼女は「異端」だと映るかもしれない。だが私は彼女が行き着く先が流れが速すぎる今のアイドルたちではないと確信している。そりゃそうだ、だって彼女は9月27日のステージで激しいフリもなにもしなかった、それは自身が憧れる80年代のアイドルたちもそうだったからだ。魅せ方が違うのだ。決してダンススキルが低いというわけではない。けれど彼女が追い求めているのはそんな次元のものではない。そしてそれを具現化し、今を生きる96年生まれが魅せる80年代とのハイブリッド型。私は思った。こんなにも笑顔でゆっくりと流れるような楽しいライブを見たのはいつ以来だろう、もしかして初めてかもしれないと。歌と笑顔であんなにも幸せを感じられるのは、きっと初めてだった。

 2012年3月末、武藤彩未さくら学院の卒業式でこう言った。

「彩未が輝ける場所を作ってくださいますか」

 ファンはずっと待ち続けていただろう。ソロアイドルとしての武藤彩未が輝く場所を作るために待ち続けていただろう。そして彼女は帰ってきた。

「みなさんがいる限り彩未は歌い続けます」

 1時間半のライブで何回も彼女は言った。その目はしっかりと前とファンを見据えていた。彼女がここまで言うんだから私も彼女が追い求めるアイドルに行き着くまで見届けなければならないなと思う。あんな幸せな時間をくれたのだから、そのくらいはしなきゃならぬ(笑)

 武藤彩未はこれからも80年代の遺伝子を取り込み、そして新しいものを生み出し、ファンにいつも寄り添う曲を歌い続けるだろう。女神のサジェスチョンに惑わされるのも悪くはない。

 ちなみにライブ翌日のさくら学院のライブ物販で買ったランダム生徒証は4枚全部杉崎寧々ちゃんを引くという運命力を発揮してしまった。前回のライブで太ももを見た代償ということだろうか、私は飯田來麗ちゃんが好きなんだけれどと悔しさを晴れた渋谷の空に投げておいた。多分ねねどんはほらみろほらみろと言っているような気がしているようでならない。中学生に振り回され、高校生に魅入り、楽しい遠征であった。

 
武藤彩未 -セシル(浅香唯カバー) DNA1980 - YouTube

*1:熊井友理奈鈴木愛理の抹茶大好き2人のコンビ、抹茶ーずを意識したもの